1987 年 35 巻 2 号 p. 103-106
人類の長い歴史の上で, 病気との闘いの主な武器である薬を捜そうと, 多くの努力がなされてきた。まず身の回りの植物から薬は見い出された。近年, それらの薬から「有効成分」の単一化合物をとり出す研究が盛んに行われた。阿片(あへん)からモルヒネの抽出はその第一号である。さらに天然物を元としない合成医薬品が, アスピリンを初めとして数多く見い出された。また近年めざましく発達している抗生物質も, 微生物から得たそのままでなく, 化学的に加工したものが多い。また人体の仕組みがわかってくるに従い, その中にある微量の生体調節物質を薬として用いる場合も増えた。遺伝子工学などの高度技術が, それを得るために使われることも多い。