日本小児血液学会雑誌
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HLH-94protocolを基本にしたimmunochemotherapyで治療した重症EBウイルス関連血球貪食症候群の3例
角 由紀子池宮 美佐子石井 武文細井 岳迫 正廣
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2002 年 16 巻 6 号 p. 340-347

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抄録

EBV-HLHは高サイトカイン血症のコントロールが困難であり急激な臨床経過をきたすことで知られている.近年, 国際HLH-94 protocolがHLHの治療に使用され成功しているが, EBV-HLHの最良の治療としてコンセンサスが得られているわけではない.シクロスポリンA (CSA) は特異的にhelperT-cell機能とリンホカイン産生を抑制することはよく知られている.それ故に, 異常に活性化されたT-cellおよびmacrophageによるサイトカインストームを抑制するためにEBV-HLHの急性期にCSAを投与することは理にかなっていると考えられる.われわれはHLH-94 protocolを基本にしたimmunochemotherapyで治療した3例の重症EBV-HLHを提示した.1例はHLH-94 protocolで, さらに組織障害の強かった2例はHLH-94 protocolに加えCSAをdaylより3mg/kg/day持続点滴で併用して治療した.3例とも治療経過は良好で, 33カ月以上再発はない.CSAの臨床効果を評価するために3症例の治療経過中の検査所見を比べた.CSAを併用した2例のほうが血液学的回復は早く, 肝酵素やフェリチン (FRN) も早く正常化した.CSAに起因する副作用はみられなかった.これらの観察は, HLH-94 protocolにCSAの早期併用を行うことはとくに重症のEBV-HLHには有益であることを示唆しているかもしれない.

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