医療
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大量輸血時,低Ca血症によりシヨツクを起した1症例
宮尾 秀樹一杉 安秀深井 清子小野 章川添 太郎
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1982 年 36 巻 6 号 p. 566-569

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抄録

輸血に伴う低カルシウム血症はACD血中のクエン酸が, 患者血中のイオン化カルシウムと結合することによりおこる. 今回, 我々は胃静脈瘤破裂の患者が, 急速輸血にも, 昇圧剤にも, ステロイド剤にも反応しない重篤な循環虚脱に陥り, カルシウム剤投与により, 急激な循環動態の改善及び心電図上, 心室性期外収縮の消失, ST成分の改善, Q oTc時間の改善をみた. 一般には, 輸血によるイオン化カルシウムの低下は一時的で, 輸血終了後, 次第に上昇してくるといわれている. その理由として, 血中に入つたクエン酸の細胞外液中への拡散, 肝臓によるクエン酸の代謝, 腎臓によるクエン酸の排泄などがあげられている. しかし肝硬変の患者では, クエン酸代謝が障害されているため, 大量輸血時には, 積極的にカルシウム剤を投与すべきであると考える.

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