1996 年 39 巻 4 号 p. 271-281
蛍光標識単クローンフォスフォチロシン抗体を用いて, 簡便で高感度なヒトインスリン受容体 (以下IRと略す) 自己リン酸化能の測定法を新たに開発した. 同測定法を用いて, 高インスリン血症を伴うインスリン非依存型糖尿病, および耐糖能異常に占めるIR異常症の関与を検討する目的で, 空腹時血中immunoreactive insulin (IRI) が15μU/ml以上の124名の赤血球IR自己リン酸化能を測定した. このIR異常症のスクリーニングにて, IR異常症と考えられる5家系を見いだした. 更に詳細に検討し得た2家系において, 同程度のIR機能不全を有する患者の耐糖能は一様ではなく, IR異常症における糖尿病の発症因子として, インスリンの初期分泌が重要な因子と考えられた.