2017 年 31 巻 3 号 p. 326-335
【背景】気管支喘息急性増悪時におけるネブライザーと比較したスペーサーでの加圧噴霧式定量吸入器 (pMDI) による短時間作用性β2刺激薬 (SABA) 吸入の有用性についてシステマティックレビュー (SR) を施行し, そのエビデンスを評価した.
【方法】20歳未満の喘息患者の急性増悪に対し, 医療機関でSABA吸入をスペーサーを用いてpMDIで実施した群とネブライザーで実施した群を比較した無作為化比較試験 (RCT) を抽出した. 複数回吸入後の入院率を主要評価項目とした.
【結果】先行文献より30文献26RCTを抽出した. 追加検索で抽出されたRCTはなかった. 主要評価項目について9RCT (363名) で解析した結果, ネブライザー群に対するスペーサー群の入院リスク比は0.71, 95%信頼区間0.47~1.08, p=0.11だった. また, 外来滞在時間はスペーサー群で有意に短く, 脈拍数増加率や振戦の頻度はスペーサー群で有意に低かった.
【結論】スペーサーを用いたpMDIによるSABA反復吸入の効果はネブライザーと差がないことが示唆された. しかし, 採用したRCTにおけるSABAの吸入量はわが国の常用量よりも多く, わが国での検討を要する.