1991 年 29 巻 12 号 p. 1630-1637
症例は23歳男性. 喘息にて当科外来に通院中好酸球増多症出現し経過を観察されていたが, 熱発でインドメサシン座薬を使用したところ胸内苦悶感・呼吸困難を訴え, 病室移送中心肺停止を来した. 蘇生後の心電図所見, 心筋逸脱酵素の上昇並びに心エコー所見から急性心筋梗塞と診断された. その後も前胸部痛と腹痛をしばしば訴え, 検査のため入院中にサリドン®を内服したところ, 強い前胸部痛と共にECG上ST上昇が現れた. 冠動脈造影では狭窄も動脈硬化性変化も見られず, 心筋梗塞様症状及び前胸部痛は冠動脈の強い攣縮と好酸球による心筋の直接傷害に起因すると考えられた. 本例は臨床経過より Churg-Strauss 症候群と診断され, 皮膚生検及び経気管支肺生検によりこの診断に矛盾しない所見が得られた. ステロイド投与により前胸部痛・腹痛の訴えは消失した. 本例は2度にわたって鎮痛解熱剤投与により急速な心血管症状を呈しており, アスピリン喘息を合併する本症候群患者に対しては慎重な対応が必要と考えられる.